コロナと口の中の症状
COVID-19と口の中の病気の関連は多くの論文で示唆されていますが、世間ではなかなか口の中に注目されることはありません。
今回、コロナに感染した場合どのようなことが口の中で起こるのか
2021年3月に口腔の症状に焦点をあてた新たな論文が更新されましたので紹介させて頂きます。
コロナの一般的な症状としては発熱、咳嗽、呼吸困難、筋肉痛、疲労、持続性頭痛、下痢、痰、喀血が報告されています。
SARS-CoV-2は、鼻や口に存在する細胞を標的としており、COVID-19患者では化学感覚(味覚および嗅覚)障害は、前症候性または無症候性の患者でも頻繁に報告されています。
<味覚異常>
味覚異常の発生率
2020年1月1日から4月21日までに5つの研究で味覚消失/味覚異常の有病率は49.8%と推定されています。2020年3月から6月までの33件の研究で、味覚障害38%、味覚減退35%、味覚消失24%の有病率であることを報告しています。
ヨーロッパのコホートで34〜86%、北米で19〜71%、中東で36〜98%で、アジアより高い発生率にあるそうです。
どのような味覚が障害を受けるのか
ヨーロッパおよびアジアのCOVID-19患者の症状は、味覚機能障害には、塩味、甘味、酸味、および苦味の障害が起こると述べています。
味覚異常の割合
味覚異常は甘味:47.7%、塩味:42.2%酸味:41.4%の割合で認めたそうです。
味覚の喪失の割合
別の論文では完全な味覚の喪失は75.7% 苦味8.1%、塩味4.1%、および甘味1.4%の割合で認められたそうです。
国や地域によって味覚異常の発生率は異なるようです。
<粘膜病変>
COVID-19については、口腔粘膜の病変が示唆されていますが、ウイルス感染によるものなのか、感染による二次的な症状なのかは、いまだ不明です。
口腔粘膜とCOVID-19に関連するレポートではCOVID-19患者男性13人(年齢:24〜81歳)と女性10人(年齢:32〜83歳))に頬っぺたや舌、唇に水泡やただれなどの炎症(口内炎、地図状舌、剥離性歯肉炎、口角炎、潰瘍)を発症することを報告しています。
部位
口の中の病変が出来る場所は最も一般的な部位は舌(38%)であり、唇粘膜(26%)次いで口蓋(22%)に続きます。
性別
性別でほぼ同じです(49%の女性と51%の男性)。
年齢
年齢は高齢であるほど、より広範囲で重度の口腔病変を発症するようです。
COVID-19に関連する口腔粘膜病変は、口腔衛生の欠如、日和見感染、ストレス、免疫抑制、血管炎、およびウイルス感染に続発する過剰な炎症反応が関連していることを示しています。特に感染した場合、免疫機能が低下し、長期の薬物療法を受けるため口腔の病的状態をさらに悪化させる可能性があります。
先日、テレビでも取り上げられた「コロナ舌」とした舌の腫れのような症状は学会誌によっては非常にまれな疾患として扱われています。
<口腔乾燥症>
またウイルスは唾を出す臓器にも攻撃するため、唾を出す臓器が炎症を起こし、唾液分泌に影響を及ぼします。それにより口の中が乾燥したり、唾液が減少する事による味覚の変化も起こります。
口渇は全体で46.3%、男性の22.2%、女性の24.1%に見られました。(イタリア、中国、イスラエルの調査では46%から56%の範囲で、COVID-19に関連した口腔乾燥症の有病率は、国によっての違いは少ないようです。)
ウェブベースのアンケート調査では、口腔乾燥症は男性の21.9%と女性の34.4%によって報告されています。
口内乾燥症は女性の方が発生率が高く、年齢が上がると症状が出やすいようです。
さらにCOVID-19の診断前に74.5%口腔乾燥を自覚したとの報告がありました。
味覚異常や口腔乾燥が比較的早期に発症し、他の症状よりも先に現れるため一つの診断材料になることをこの論文では述べています。しかしながら、感染した場合、風邪などの呼吸器症状が一般的な症状であり、口の中が乾燥するような症状、口の中が荒れている症状は必ず出現するものではありません。
現在は変異ウイルスにより症状も多様化しています。自己判断はされず、先ずはかかりつけ医に相談してください。
<参考文献>
1)Oral Symptoms Associated with COVID-19 and Their Pathogenic Mechanisms: Hironori Tsuchiya、A Literature Review Dent. J. 2021, 9(3), 32;
*現在は変異株の感染が主流となっています。コロナウイルス (変異株)の感染により口腔内の症状が出現した報告は、現在のところありません。