歯周病のお話④

口の中に細菌がいるからといって必ずしも感染を起こすわけではありません。歯周病を発症する人と発症しないない人がいます。

歯周病の発症には、いろいろな条件が関わっています。その条件として

「歯周病菌の攻撃力」「体の抵抗力」「生活習慣」といったことが挙げられます。

 

「歯周病菌の攻撃力」

お口の中には500〜700種類の細菌が存在します。細菌自体は1つずつ存在するわけではなく、細菌をはじめ微生物は、固体や液体の表面に付着し、住み心地のいい住まいを作り、仲間を増やして、バイオフィルム(生物膜)と呼ばれるものをつくります。

花瓶の内壁や流しなどにみられるネバネバした物は細菌が形成したバイオフィルムです。口の中の歯垢はバイオフィルムの典型例です。

 

う蝕菌は歯の表面に歯周病菌が歯周ポケット内にバイオフィルムを形成し、複数の微生物がそれぞれに影響を及ぼしあい、一つの社会を作っています。

一般的に、成人の口腔内には700種類を超える細菌が生息するといわれており、幼少期からの生活習慣や生活環境等を背景に様々な細菌叢を形成しています。これらの口腔内細菌の中で歯周病に関わる細菌は、病原性の違いによって6つに色分け分類され、ピラミッドで表わされます。

ピラミッドには上下関係があり、下層に分類される細菌は病原性が低く、頂点に上がるにつれ、重度の歯周病に影響すると言われています。

<ポルフィロモナス・ジンジバリスが最恐の理由>

  • 普段悪さを起こさない菌がポルフィロモナス・ジンジバリスがいることによってパワーアップする
  • タンパク質ならなんでも分解する
  • 毒素を合成する
  • 吸血鬼のように血液をエサにしています

  • 出血するほど強力になります
  • しぶとい

 

必ず人の口の中にレッドコンプレックスに属する
細菌が存在するわけではありません。

 

一番下の層にあるブルーコンプレックスなどがお口の中に定着しないとその上のオレンジコンプレックスは定着しません。また、オレンジコンプレックスがお口の中に定着しないとレッドコンプレックスは定着しません。病原性の低い細菌が増えると病原性の高い菌が住みつきます。また一度口腔内に住みついた悪玉菌は消えません。

口の中の細菌叢は10代のうちに決まっていき、20代で定着してしまいます。よく治療中に『うちの家系は歯が弱いから』と言われますが、一つの原因として親からレッドコンプレックスに属する細菌をもらっていることもあります。

今、コロナ の影響で歯科診療の受診から離れていた患者が来られます。今まで通院を続けることによってコントロール出来ていた口腔内の環境がこの細菌のせいで悪化してしまった患者が多数おられます。

 

元の状態に戻すことが難しい事もありますし、治療には時間がかかります。定期的に受診をするようにしましょう。

 

<参考文献>

1)SIGMUND S.SOCRANSKY,ANNE D.HAFFAJEE Dental biofilms: difficult therapeutic targets Periodontology 2000, vol.28,2002,12-55

2)天野ドクターの歯周病絵本 バイオフィルム公国物語天野 敦雄 (著)