コロナ の味覚異常について

現在の新型コロナウイルス感染症の主な流行は、「オミクロン株」の「KP.3」と呼ばれる変異ウイルスが広がっています。「KP.3」は「JN.1」から派生したウイルスで、KP.3の症状は、典型的なCOVID-19の症状に似ており、発熱や、咳、倦怠感、味覚や臭覚異常がみられます。また人によっては「喉の痛みや頭痛、筋肉痛」を経験する人もいます。症状の重さなどについてはこれまでと変わらないとされていますが、従来のウイルスよりも感染力がやや強く、過去の感染やワクチンによる免疫を逃れる能力が高いと報告されています。

マスクを外す人も増えていることから全国的に感染が広がっている状況です。コロナ 感染症は初期に上気道や肺が感染する部位ですが、消化器や血管、腎臓などにも感染することがあり、多様な症状が見られることが証明されています。

また口の中にも症状が出てくることが報告されており、当初のアルファ株から比較すると発症率は低くなったものの、オミクロン株以降も味覚障害(味覚喪失)、味覚異常(味覚障害)、味覚低下、口腔乾燥症などの症状が出ます。

アメリカの国立衛生研究所によると、コロナウイルスは口腔粘膜や唾液腺の細胞にも感染することが示されており、唾液中に含まれるSARS-CoV-2が多いほど、味覚障害や嗅覚障害が見られる傾向にあるようです。

COVID-19の口腔症状は当初、一過性のものであると考えられ、治療しなくても最終的には消失すると想定されていました。しかし、COVID-19から回復しても、長期にわたり味覚障害が残ることが報告されています。追跡調査を行った論文には、8か月の追跡調査で味覚障害の有病率が39%、12か月の追跡調査では味覚障害が19%、12か月の追跡調査では味覚障害または嗅覚障害の有病率が22%と症状が続いているようです。

さらに口腔乾燥や唾液分泌の低下が持続することもあるようです。1~8か月間の追跡調査では9~29%の割合で残存していることが報告されています。

味覚障害の治療については、様々な治療法(亜鉛の投与、ステロイドの外用や内服、漢方薬や生薬、テトラサイクリン系による抗生物質、星状神経節ブロックなど)が試されていますが、残念ながらいずれも有効な治療には至っていないようです。

<参考文献>

1)Treatments of COVID-19-Associated Taste and Saliva Secretory Disorders Dent. J. 2023, 11(6), 140;

2)Scientists find evidence that novel coronavirus infects the mouth’s cells(National Institutes of Health)