コロナ舌(ストレスに要注意)
先日、ニュースで大きく取り上げられていましたが「コロナ舌」について少し、まとめてみたいと思います。
ニュースでは、以下のような報道がされていました。
【スペインの研究チームが感染初期の兆候として「コロナ舌」と呼ばれる異常が発生する事があるとした論文が掲載されたのことです。 新型コロナウイルスの304人の感染者を調査すると、感染者の4人中1人が舌に異常を感じ、写真のような舌にできた大きな斑点が出現することがあるそうです。これは、新型コロナウイルスによる体の異常であり、舌が腫れ、時には歯形が付くほど腫れるそうです。感染初期に起こる兆候で、味覚を失うと述べており、 世界各地で“コロナ舌”と言われている。】という内容でした。
初期症状として「コロナ舌」が存在するものであれば診断の助けになると思い、いくつかの論文を調べてみました。
新型コロナウイルス感染症の最も一般的な兆候と症状には、発熱頭痛、喉の痛み、嗅覚減退、味覚減退、下痢、呼吸困難、肺炎などがあります。また皮膚症状も報告されています。
2019年のコロナウイルス病(COVID-19)の患者では、いくつかの口腔内の異常が観察されています。
口腔内の症状には、潰瘍、びらん、水疱、小水疱、膿疱、裂傷または舌乳頭の消失、斑点、丘疹、プラーク、色素沈着、口臭、白斑、壊死、点状出血、腫れ、紅斑などが報告されており、
最も発現する部位は、舌(38%)、唇粘膜(26%)、および口蓋(22%)でした。
診断は、口内炎、ヘルペス状病変、カンジダ症、血管炎、川崎様粘膜炎、薬疹、壊死性歯周病、水疱性出血性口内炎、口角炎などでした。
性別でほぼ同等でした(49%が女性で51%が男性)。
また高齢で重症度が高い患者は、より広範囲に重度の口腔病変をが観察されたそうです。
これらの口腔内の病変がコロナウイルスの攻撃によるものなのか、それとも患者の全身状態(COVID-19の感染による口腔衛生の欠如、日和見感染、ストレス、免疫抑制)に起因する二次的症状によるものなのかについては、依然として疑問が残ると述べています。
コロナウイルス感染者の口腔内を精査することは難しく、全身の治療が優先されるため研究論文が少ないのが現状のようです。口腔内に異常が起こる可能性があることは確かのようですが、現時点では、コロナ舌を初期症状として捉えるには難しいような気がします。
なぜなら写真のような舌の異常(舌の縁のボコボコ)はコロナウイルスの感染に関係なく「舌圧痕」と呼ばれ、健常な方にもみられます。
この「舌圧痕」は診察をしていると最近多く、みるような気がします。
ストレスなどにより、歯をくいしばると、歯には強い力がかかります。歯が倒れないように舌で歯を支えるため、舌の縁に歯形がくっきりと跡がついてしまいます。
現在も多くの感染者が報告されている中では、日常生活が制約され、ストレスを感じられている方がたくさんおられます。そのような方のお話を聞くと「旅行に行けない」「お友達とおしゃべりができない」といった普段ストレスの解消となっていたことが出来なくなり、気付かないうちにストレスが溜まり、睡眠中に歯ぎしりや喰いしばりをするようになってしまっているようです。
写真のような舌に歯型がついていたらストレスにも要注意です。
ストレスを溜めないようにリフレッシュできるようなことを探してみてはいかがでしょうか。
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コロナウイルスの後遺症についてはこちら
*現在は変異株の感染が主流となっています。コロナウイルス (変異株)の感染により口腔内の症状が出現した報告は現在のところありません。
<参考文献>
1)Oral mucosal lesions in a COVID–19 patient: New signs or secondary manifestations? Int J Infect Dis. 2020
2)Oral manifestations of COVID–19 disease: A review article. Dermatol Ther. 2020 Nov 25
3)Oral manifestations of COVID–19 disease: A review article. 2020 Nov 25 Online ahead of print.
4)北海道大学歯学部口腔診断内科