味覚異常について

7月末から今月にかけて急増した新型コロナウイルスの感染の「第2波」がピークに達し、縮小に向かいつつあると分析が出てきました。

しかしながら、地域によっては感染者数の減少傾向が続くかどうかが分からないため、まだまだ十分な警戒が必要な状況が続きそうです。

新型コロナウイルス感染症については様々な研究が報告されています。感染しても30〜50%では症状が出ないそうです。もし症状がでた場合、初期症状は風邪やインフルエンザと似ていまますが、風邪に比べると高熱が出ることが多く、頭痛や全身の関節痛・筋肉痛を伴うそうです。また特に若年者や女性に多いそうですが、初期症状として臭覚異常や味覚異常が出現するそうです。

 

コロナウイルスの味覚異常・嗅覚異常の割合

ヨーロッパの耳鼻科医たちの報告では,中等症以下のCOVID-19患者さん417名のうち,86.7%に嗅覚障害,88.8%に味覚障害がみられたそうです.韓国やイタリア,アメリカ合衆国からも同様の報告があり,COVID-19は高率で嗅覚・味覚障害が表れるのは確かなようです。

しかしながら日本耳鼻咽喉科学会のホームページに記載されていますが、嗅覚・味覚障害 はインフルエンザや一般の「かぜ」でも生じることがあり、必ずしも新型コロナウイルスだけが味覚障害の原因になるわけではありません。

 

なぜコロナウィルスに感染すると味覚障害が起こるのか?

心臓や腎臓などの細胞表面にはタンパク質(ACE2)があり、心臓の保護、血圧や血管の調整などの機能があります。コロナウイルスまたはSARSウイルスの表面にもタンパク質があり、ヒトの細胞のタンパク質と結合します。

このACE2 は,口腔粘膜や歯肉にもありますが,舌の粘膜にはより多くあります。コロナウイルス が舌へ感染すると、味蕾細胞の機能が障害され,味覚障害が生じている可能性があるとのことです(図 )。鼻腔でも受容体タンパク質が存在していることから 、コロナウイルス が鼻の細胞に感染することにより嗅覚障害が起こるといわれています。

 

 

 

 

 

 

 

 

コロナウイルスと口腔との関連

このウイルスとヒトの細胞との結合を手助けするのが歯周病菌です。

口の中が不潔であるとコロナウイルスがカラダの中に入りやすくなります。

毎日、お口の中は清潔にしておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

コロナウイルス以外の味覚異常の原因

味覚異常は全身の病気に関連して出現することもあります。

日本口腔外科学会のHPで味覚異常の原因をまとめていますので、ご参照下さい。

*味覚については先月のブログをみて下さい

【原因】

  • 乳頭の萎縮・消失……生理的(加齢的)、貧血などによる
  • 唾液分泌の低下……加齢、シェーグレン症候群などによる
  • 唾液中の非生理物質の排泄
  • カンジダ症
  • 医原性の味覚低下……がん治療(放射線、抗がん剤)により、唾液腺機能が障害され分泌低下、舌乳頭が萎縮することによる
  • 亜鉛の不足……食物中の亜鉛と薬剤がキレートをつくり、亜鉛の吸収が障害され、味蕾細胞の若返りが障害されることによる
  • 降圧剤、トランキライザー、抗生物質、抗アレルギー剤等による薬剤の作用
  • 歯周病
  • 特発性、心因性
  • 体感異常症(セネストパチー)

 

 

<参考文献>

1)日本口腔外科学会(https://www.jsoms.or.jp

2)日本耳鼻咽喉科学会

3)Gautier JF & Ravussin Y :A New Symptom of COVID-19:Loss of Taste and Smell. Obesity, 28 .848, 2020

4)今井健一、小林隆太郎ほか:新型コロナウイルスのBiology-ウイルスの特徴から口腔との関連まで-. 歯界展望, 136(1):4-16, 2020.